水の都ベネチア。世界遺産にも登録されている、イタリアの水上都市です。訪れた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
先日のニュースでも取り上げられていましたが、今週、過去50年間で最大とされる規模の高潮がベネチアを襲い、都市が浸水しています。11月12日には、最高水位が1メートル87センチに達したとされています。亡くなった方もいるようです。
ベネチアはどんな都市?
ベネチアは、「水の都市」という名前とは別に「沈みゆく都市」としても名が知られています。
私は1990年代に一度だけ訪れたことがあるのですが、その時から、地盤沈下が進んでいて、将来は水没してしまうのではないかと言われていました。沈む前にもう一度来たい!と強く思ったのを思い出します。
ベネチアは観光都市でもあり、世界遺産にも登録されているので、人類の文化遺産ともいえます。保全をするべく国も努力しています。2003年、当時の首相が発案したモーゼ計画というものがあり、数年で完成させるはずだったのですが、どうやら計画は暗礁にのりあげているようです。
アクアアルタ(acqua alta) が頻発
ただ、最近ベネチアが水没している理由は、地盤沈下による影響もあるのでしょうが、直接的には、今回のニュースにあるアクアアルタ(acqua alta) (高潮)によるものです。
これは2012年の映像ですが、状況はあまり変わっていないのでしょう。
アクアアルタによる浸水は昔は10月から12月が一般的だったそうなのですが、今は地球温暖化の影響か、1年中来るようです。
アクアアルタとともに生きる
ベネチアは観光都市ではありますが、もちろん住んでいる人もいます。
今日では、1日におよそ2.6人の市民が街を離れています。現在の人口は5万4000人で、これは過去50年間に12万人が減少した計算になります。
2016.10.19の記事。 ナショナルジオグラフィック 観光客の波がベネチアを台無しにする?
島を離れる人もいる中で、島に住み続ける人々もいます。
あるときベネチアに住む人に、「こんなに浸水が多く、不便な街に住んでて引っ越そうとは思わないの?」と聞いてた人がいました。でもその人は「この街を愛してるもの。浸水を含めてもね」と答えてました。この答えがベネチアに住む多くの人に共通する意見かどうかは定かではありませんが、非常に印象深い返事だったことを覚えています。
ベネチアの「アクア・アルタ」! 水浸しになった街の生活風景
ベネチア市民の必需品
ベネチア市民の必需品は、長靴と、高潮アプリのようです。アクアアルタ(高潮)が最も重要な関心事。文字通り死活問題ですから。
ピザ屋さんも本屋さんも、ちょっとした浸水なら営業を続けています。
水浸しというか床上浸水しているフロアの中で普通に営業を続けています。
木造建築が多い日本と違って石造りなので、床が腐るとか考えなくて良いのは良いですけども。なかなかシュールな光景です。
ピザ屋さん。うっかりテーブルの下にものは落とせませんけれど。店主も、従業員も、店を行き来しているし、お客さんも普通に店に入ってきます。普通と違うのは、従業員も、お客さんも、長靴を履いていること。
本屋さん。
こちらの書店『Libreria Acqua Alta / リブレリア アクア アルタ』では高潮によって本が濡れないように、バスタブや舟に本を並べています。それが観光客の目当てになって話題になっているようです。
こちらも従業員もお客さんも長靴を履いている、それだけが普通と違うこと。
アクアアルタが来るのが日常茶飯事のことなのであれば、シュールなんて言っていられません。普通ってなんだろうって考えさせられます。
「もうアクアアルタと共存するしか無いんだ。」どこかの動画内で話していたベネチアに住む木彫り技師の男性の言葉が胸にしみます。
最後までお読みいただきありがとうございました。